がんなどの疾患部位に効率良く薬を届け、かつ副作用を軽減するためのナノカプセルを、薬輸送システムと言います。
私たちの研究室では、スポンジのようにたくさんの穴の空いた、直径1万分の1ミリメートル程度のガラス球を、抗がん剤を包むカプセルとして使っています。そのスポンジ様ナノガラス球の中にがん治療薬を内包し、ガラス表面を特殊な高分子で包んだ薬輸送システムを開発することで、従来の薬投与法にくらべて100倍以上の効果が得られました。その様子を、光学顕微鏡を用いて細胞レベルで観測しています。
現在の技術では、太さ1万分の1ミリメートルの金属の針(ナノワイヤー)を作成することができます。私たちの研究室では、そのナノワイヤーを細胞の内部にまで差し込み、細胞内部に存在する微量の化学物質に関する情報を得る技術を世界で初めて開発しました。この技術を用いることで、たとえば細胞内に取り込まれた微量の薬分子などの検出に成功しています。
また、同様の技術を用いて、遺伝物質を細胞核内に直接届ける方法の開発もおこなっています。この技術は、とくに遺伝子治療への応用を目指しています。