私たちの研究室では、自然の法則を利用して結晶を成長させることによって、最先端の半導体ナノ材料を自在に制御する方法を研究しています。そして、これまでにない半導体ナノワイヤ材料を軸とした、次世代エレクトロニクスを担う、画期的なデバイスを実現しています。
半導体ナノワイヤは、髪の毛の数千分の一程度の大きさの直径をもった極微細な細線構造で、その形や電子的・光学的・量子力学的な機能性から、次世代エレクトロニクスの基本材料として、注目されています。
スマートフォンなどで使われている集積回路は、電流の流れをスイッチするトランジスタを小さくし、集積度を高め、高性能化・低消費電力化を実現してきました。しかし、近年、低消費電力化が頭打ちになり、消費電力が大幅に増えています。低消費電力化の妨げになっている原因の一つは、スイッチ動作とは関係のないリーク電流で、微細化とともに、この物理的な限界が明らかとなってきました。
私たちの研究室では、半導体ナノワイヤで生じる量子トンネル効果に着目し、これをスイッチ素子に使うことで、従来のトランジスタの限界を大幅に超える省エネトランジスタを実現しています。この技術は、LSIの消費電力を10分の1以下にできるため、たとえばスマホの電池切れを大幅に克服できる可能性があります。
30年、40年後の情報科学やエレクトロニクスはどのように進展しているでしょうか??きっと、今以上に消費電力の問題が深刻になる一方、デバイスにはさらなる高性能化・高機能化が求められます。
私たちは、このような次世代情報科学技術の基礎となる分野で、将来充電のいらないセルフパワー型の高機能集積回路の実現を目指して日々研究をしています。いずれは、ナノワイヤなどの最先端材料を中心に、高効率太陽電池やセンサー素子、低電圧トランジスタ回路を作り、室内照明で発電した電力で、スマホを動かせるような世界を実現します。また、次世代情報通信に欠かせない量子暗号通信を実現できる光デバイスなど、ナノ構造を生かすことで、これまでにない素子を実現します。