わたしたちは、アニメやSF映画で描かれているような、ロボットが人間に交じって一緒に生活を送るような未来社会の実現を目指しています。そのような社会では、ロボットがさまざまな場面で人間を支援するとともに、ロボットが不得意とする場面では人間がロボットに少し手を貸して助けてあげるような、両者が協調することで「共生」できることが重要となります。
このような人間とロボットが「共生」する社会を実現するためには、両者の間に円滑なコミュニケーションが実現されている必要があります。このため、われわれは、ヒューマンロボットインタラクション(HRI)やヒューマンエージェントインタラクション(HAI)という新しい研究分野を立ち上げ、どのような方法を用いれば円滑なコミュニケーションが実現できるかを研究しています。
ロボットの研究開発では、ハードウェア(ロボットの身体や動作機構)とソフトウェア(ロボットを動かすプログラム)の両面から研究を進めていく必要があります。人間と円滑なコミュニケーションを行うロボットには、ハードウェア以上にソフトウェアの研究が重要となります。
たとえば、ヒューマノイドロボットの研究分野では、日本を筆頭に、ハードウェアの研究が積極的に行われ、ホンダのアシモなどすばらしい二足歩行ロボットが作られてきました。しかし、ロボットに搭載するソフトウェアはまだまだ未熟であり、ロボットが自分で環境を認識しながら、人間と円滑なコミュニケーションを行うことには困難がともないます。
そこで、われわれの研究室では、さまざまなメディアを移動しながらユーザの日常生活をサポートすることができるエージェントシステムを開発しました。ドコモの「しゃべってコンシェル」やiPhoneの「Siri」がかわいいキャラクタとなり、スマホやパソコン、家電などに乗り移りながら、ユーザの日常生活を支援している様子を想像してもらえればと思います。図Aは、ユーザが外出するので、エージェントがタブレットPCからユーザの身に付けているウェアラブルPCへ移動しているところです。また、図Bは、部屋が暗いので、エージェントがユーザのウェアラブルPCから家電(スタンドライト)へ移動して、部屋を明るくしているところです。このシステムのポイントは、会話や行動履歴からユーザの好みや行動の傾向を学習し、それらの個人情報をもとに各ユーザに特化したさまざまな支援を行うことができることです。
さらにわれわれは、「空気を読むロボット」の開発にも取り組んでいます。言うまでもなく、私たちは自然にその場の「空気を読み」、行動しています。たとえば、友だちが誰かと熱心に話をしていたら、いきなり割り込むことはせず、会話が途切れるタイミングを待って、話しかけるようにしています。ロボットにこのような機能があると、人間社会の中でも一緒に暮らしていけるのではないでしょうか?図Aは、会話が盛り上がっている人の間に侵入してしまい、会話を中断させてしまう、従来の古いロボットです。一方、図Bは、会話が盛り上がっていると、その場を回避して、会話の妨げにならないように振る舞うロボットです。このロボットについて、詳しく知りたい人は、以下のページの動画を見てください。
http://www.ist.hokudai.ac.jp/netjournal/net_22_ex.html
ここでご紹介したような、人間と「共生」できるロボットについて一緒に研究しながら、未来の社会に思いを馳せてみませんか?