生体情報コース

分子の振動を利用した新しい診断ツール

1分子の振動で組織・病変部を可視化する

分子は,原子(質点)が化学結合(ばね)によってつながれているため,振動することができ,分子振動の振動数は,分子の種類や構造に敏感です.この分子の振動を用いて細胞・組織を見分けて可視化するイメージング装置の開発や診断への応用を行なっています.

病理診断では,患者の体より採取された病変の組織や細胞からガラス標本を作ってこれを観察し,診断を行ないますが,組織や細胞はほとんど無色なため,そのままでは観測ことができず“染色”することで色を付けて観測を行います.しかし,染色は生きた細胞に影響を与えるため,ヒトに適用することは容易ではありません.無染色に組織や病変部を見分けることができれば,より安全で確実な診断・治療を行なうことが可能となります.そこで,非線形ラマン散乱イメージングと呼ばれる,分子振動を利用して無染色に組織や病変部を見分け,かつ高速な観測法の開発を行なっています.

※動画は3T3-L1 脂肪細胞の脂質分布を無染色に100 frame/s で観測

2高速波長走査同期ピコ秒レーザーの開発

非線形ラマン散乱イメージングには特殊な光源が必要です.波長幅が狭くかつ瞬間的(ピコ秒)に光り,波長が異なる2つのレーザーパルスを同時に試料に照射する必要があります.また,一方のレーザー光源の波長を高速に変化させる必要もあります.このようなレーザー光源も独自に開発することで,医療現場で使える無染色イメージングを実現しようとしています.

※写真は高速波長走査同期ピコ秒レーザー

3内視鏡への展開

ダビンチに代表されるロボット支援外科手術が行なわれるようになってきました.このようなロボット支援手術では,内視鏡の画像を見ながら手術を行ないますが,現在ではわずかな色の違いや解剖学的知見を元に組織・病変部を見分けています.そこで,非線形ラマン散乱イメージングを利用した,新しいロボット支援外科手術の眼を開発しています.

手術後の機能維持のために神経温存手術が行なわれていますが,末梢神経までは考慮されていないのが現実です.末梢神経まで無染色に可視化することが可能となれば,患者のQOL向上が期待できます.また,ガン組織と正常組織を細かく見分けることができれば,より安全で負担の少ない手術が実現されます.

※写真は非線形ラマン散乱硬性鏡

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